京都に現存するモダン建築を一斉公開する「京都モダン建築祭2026」が、2026年10月31日に開幕しました。
前期初日は、12時の船岡温泉を皮切りに、同志社女子大学、聖アグネス教会、平安女学院大学 明治館、重信会館、東本願寺視聴覚ホールの6カ所へ。船岡温泉と同志社女子大学は10月31日のみ公開されたため、この日だからこそ組めた取材ルートです。
途中から京都市営地下鉄烏丸線を使い、今出川、丸太町、五条と南へ移動しました。時間指定のある船岡温泉から始まり、最後は東本願寺視聴覚ホールの最終入場時刻を気にしながら急いで向かうことに。
約4時間で実際に巡った順番とともに、移動方法や現地で気づいた見学時のポイントを紹介します。
京都モダン建築祭のパスポート料金や購入方法は、京都モダン建築祭2026の開催概要記事で紹介しています。
公開される建物の選び方は、京都モダン建築祭2026はどこを見る?前期・後期の注目建築もあわせてご覧ください。
京都モダン建築祭とは

京都モダン建築祭は、京都に残るモダン建築を一斉に公開し、普段は入れない建物や特別な空間を巡るイベントです。
5年目を迎えた2026年は、10月31日から11月8日まで開催。京都市内13エリアから約170件の建築が参加し、前期・後期の計4日間には61件が「パスポート公開」されます。このほか、専門家の案内で巡るガイドツアーも約120コース用意されています。
パスポート公開は原則として事前申込不要ですが、一部の建物ではオンライン整理券の取得や引率見学が必要です。公開日時や最終入場時刻、撮影できる範囲も建物ごとに異なります。
また、一部の会場には「建築ナビゲーター」と呼ばれる案内役がいます。ガイドツアーとは異なり、予約や追加料金は不要。建物の見どころや背景について、その場で解説を聞いたり、質問したりできます。
今回訪れた建物では、同志社女子大学、重信会館、東本願寺視聴覚ホールが建築ナビゲーターの配置対象でした。そのほかの会場でも、施設関係者や案内スタッフから説明を聞ける場面があります。
前期初日に巡った6カ所と移動順
この日は11時40分ごろ、1928ビル内の同時代ギャラリーでメディアパスを受け取りました。その後、タクシーで船岡温泉へ向かい、12時ごろから見学を始めています。
今回巡った順番は、次のとおりです。

船岡温泉から同志社女子大学まではLUUPを利用。その後は、京都市営地下鉄烏丸線の今出川駅、丸太町駅、五条駅を使いました。
訪問先は6カ所ですが、同志社女子大学では栄光館ファウラーチャペルとジェームズ館の2棟が公開されていたため、実際に見学した建物・空間は7つです。
12時ごろ|オンライン整理券で船岡温泉へ

最初に訪れたのは、京都市北区紫野にある船岡温泉です。
京都モダン建築祭での公開は10月31日のみ。見学にはパスポートに加えて、当日7時から先着順で発行されるオンライン整理券が必要でした。
今回は12時の枠に訪問。到着が少し遅くなったため、次の12時30分の枠が始まるまでの間に見学しました。

船岡温泉は1923年に建てられ、脱衣所は1928年に改装されています。建物は国の登録有形文化財です。
脱衣所で目を引くのが、ケヤキの格天井中央に据えられた鞍馬天狗と牛若丸の木彫です。船岡温泉が面する鞍馬口通にちなみ、鞍馬山の天狗を採用したと伝わっています。

船岡温泉を建てた初代・大野松之助氏は、もともと庭石を扱う仕事をしており、鞍馬で働いた経験があったそう。天狗の彫刻にも、初代の経験と遊び心が表れています。
周囲の欄間には、葵祭や賀茂競馬、今宮祭、上海事変などを題材にした彫刻が並びます。色鮮やかなマジョリカタイルとともに、一つひとつの意匠を見て回りました。

時間指定制の会場では、到着が遅れると、その分だけ見学できる時間も短くなります。船岡温泉のような時間指定制の建物を訪れる場合は、受付時刻より少し早めに到着できる予定を組んでおくと安心です。
13時ごろ|同志社女子大学で2棟を見学

船岡温泉を出た後は、LUUPで今出川方面へ。同志社女子大学では、栄光館ファウラーチャペルとジェームズ館を見学しました。

栄光館ファウラーチャペルは1932年、ジェームズ館は1914年の建築です。いずれも建築家・武田五一が手がけ、国の登録有形文化財になっています。
同じ大学内にありながら、2棟が建てられた時期には約20年の隔たりがあります。チャペルの礼拝空間だけでなく、窓や階段、照明、建具など、建物ごとの違いを見ながら回りました。

同志社女子大学には建築ナビゲーターが配置されており、建物についての解説を聞きながら見学できます。

なお、同志社女子大学の公開は10月31日のみでした。
14時ごろ|聖アグネス教会へ

同志社女子大学の見学後は今出川駅へ戻り、京都市営地下鉄烏丸線で丸太町駅へ移動しました。
丸太町駅から向かったのは、1898年に建てられた聖アグネス教会です。設計は、京都にも多くの建築を残したJ.M.ガーディナー。建物は京都市指定有形文化財です。

内部は、身廊と左右の側廊を持つ三廊式バシリカ型。天井を見上げると木の架構が現れ、教会内には30点を超えるステンドグラスがあります。

建物全体を見渡すだけでなく、天井や窓へ視線を移すことで、木の架構とステンドグラスを近い距離で確認できます。
14時30分ごろ|平安女学院大学 明治館へ

続いて訪れたのは、聖アグネス教会の近くにある平安女学院大学 明治館です。
明治館は1895年に建てられた煉瓦造2階建ての校舎で、設計はイギリス人建築家のA.N.ハンセル。19世紀のイギリスで流行したクイーン・アン様式を取り入れた建物で、国の登録有形文化財です。
玄関まわりでは、煉瓦壁に設けられた円窓と、石材を組み合わせた装飾に目が留まります。館内には古い木材を残した階段があり、通常は入れない校舎の内部を歩いて見学しました。

聖アグネス教会と近接しているため、2つの煉瓦建築を続けて見学できました。その後は丸太町駅へ戻り、烏丸線で五条駅へ移動します。
15時ごろ|アール・デコの意匠が残る重信会館

五条駅から向かったのは、1930年に建てられた重信会館です。
かつて寄宿舎として使われていた鉄筋コンクリート造の建物で、京都モダン建築祭では1階から屋上までの共用部分が公開されました。

左右対称の外観をはじめ、丸窓や水平線を強調した装飾など、アール・デコの意匠が残されています。内部には和洋の要素が取り入れられています。

重信会館にも建築ナビゲーターが配置されています。外観だけでは分かりにくい意匠について、その場で説明を聞きながら見学できました。

最後は東本願寺の地下にある視聴覚ホールへ

少しのコーヒーブレイクを挟み、この日最後に訪れたのは、東本願寺視聴覚ホールです。
1998年に竣工し、設計監修は建築家の高松伸。東本願寺の境内地下に造られた空間で、京都モダン建築祭ではホール内部が公開されました。

歴史ある寺院の境内から地下へ進むと、コンクリートや金属、トップライトからの光を生かした空間が現れます。地上に並ぶ寺院建築との違いも、この場所で確かめたいポイントです。

東本願寺視聴覚ホールにも建築ナビゲーターが配置されています。
地下3階の仏間は撮影禁止で、地下3階ホールでの法話中も撮影できません。靴を脱いで見学する場所があるため、靴下の着用が案内されています。
見たい建築と移動のしやすさから、ルートを考える
京都モダン建築祭の公開建築は、市内のさまざまな場所にあります。どうしても見たい建築があれば、まずは公開時間を確認し、その周辺にある建物をつなげていく方法があります。一方で、地下鉄やバスで移動しやすいエリアを中心に、ルートを組み立てるのも一案です。
ルートを考える際は、公式のガイドマップも参考になります。紙版のほか、PDF版とデジタルマップが公開されており、公開日やエリアを見ながら訪問先をつなげられます。また、建築の見どころや歴史的背景を紹介する無料のオーディオガイドも用意されています。会場で聴く場合は、イヤホンの持参が案内されています。
公開建築の周辺には寺社や飲食店も多く、京都観光と組み合わせられるのもこのイベントの魅力です。半日で複数の建築を巡るなら、エリア間は公共交通機関やシェアサイクルを利用し、近接する建物は歩いて巡ると動きやすくなります。
11月1日も4カ所は公開
今回訪れた6カ所のうち、聖アグネス教会、平安女学院大学 明治館、重信会館、東本願寺視聴覚ホールは11月1日も公開されます。
- 聖アグネス教会:13:00~17:00(最終入場16:45)
- 平安女学院大学 明治館:13:00~17:00(最終入場16:45)
- 重信会館:10:00~17:00(最終入場16:45)
- 東本願寺視聴覚ホール:10:00~16:00(最終入場15:45)
丸太町周辺の聖アグネス教会と明治館を続けて見学し、烏丸線で五条方面へ移動すると、重信会館と東本願寺視聴覚ホールをつなげられます。
ただし、東本願寺視聴覚ホールの最終入場が最も早いため、4カ所を巡る場合は東本願寺から始める、または重信会館と東本願寺を先に訪れる順番も考えられます。
公開内容や受付状況は変更される場合があります。訪問前に、京都モダン建築祭公式サイトの各プログラムページで最新情報を確認してください。
建築を知ると、京都の街がまた違って見える
普段は通り過ぎている建物も、中へ入り、細部に目を向け、解説を聞くことで、その背景や、今日まで残されてきた意味が少しずつ見えてきます。
京都モダン建築祭は、京都のモダン建築をより深く知るきっかけになるイベントです。紅葉だけではない「芸術の秋」の過ごし方として、建築を訪ねて街を歩く週末もいいかもしれません。
パスポートやガイドツアーなどの参加費の一部は、参加建築の維持・活用に還元されています。建築を知り、実際に足を運ぶことが、これから先へ残していく支えにもなっています。
前期初日だけでも充実した時間になりましたが、会期中はほかにも多くの建築が期間限定で公開されます。まだまだ巡ってみたいと思います。
後期に公開される建築については、「京都モダン建築祭2026はどこを見る?前期・後期の注目建築」もあわせてご覧ください。
この日最後に訪れた東本願寺では、夜間イベント「NAKED GARDEN NIGHTS 東本願寺・渉成園」も開催されています。建築祭のあとは、光に彩られた境内へ。そのまま夜まで東本願寺で過ごすのもおすすめです。
※本記事は2026年10月31日の現地取材と公式発表をもとに作成しています。最新情報や詳細は公式サイトをご確認ください。
取材・写真・文:京都のいちばんち/ロゴ画像:京都モダン建築祭実行委員会

