京都・松原通に、受け継がれてきた端午の節句の風景があります。
2026年5月3日、大西常商店で「菖蒲打ち」が行われました。
昨年逝去した大西里枝さんが大切にしてきた行事を、母・優子さんらが引き継ぐ形で実施された本イベント。当日は多くの参加者が集まり、菖蒲打ちとともに一日を過ごしました。
店先に集まる参加者と、午後のスタート

午後の部は13時30分に開始。
店先には、募集枠いっぱいとなった参加者が続々と集まり、温かく迎えられていました。
当日は曇天。春の嵐の影響で天候も心配されましたが、雨に降られることなく、菖蒲打ちが始まります。
菖蒲打ちの開始前に

菖蒲打ちの開始前、参加者を前に大西優子さんが言葉を述べました。
>「娘はいないが、今きっとここにいます。頑張れ、もっとやれ、と言っているように感じます。みなさんが楽しんでくださっていれば、娘も楽しんでいます。菖蒲の音は、きっと空にも届いていると思います」
この言葉とともに、菖蒲打ちが始まりました。
菖蒲打ち|音とともに広がる一体感
菖蒲を地面に打ちつける音が、店先に響きます。

午後の部はちまきづくりも含まれるため、親子での参加が目立ちます。
子どもが思い切り打つ姿に加え、それ以上に力強く打ち込む大人の姿も印象的です。
菖蒲打ちが終わると自然と拍手が起こり、会場には一体感が生まれていました。

参加者のひとりは、SNSでこの行事を知り初めて参加したといいます。
「思っていた以上に体力を使いますが、打ち終わったあとはとても清々しい気持ちになります」と話し、体験としての手応えを感じている様子でした。
午後はちまきづくり|それぞれの“こいのぼり”
菖蒲打ちのあとは、「こいのぼりちまき」づくりが行われます。

ワークショップの冒頭では、鳴海餅本店の取締役・鳴海力哉さんより、ちまきの由来について説明がありました。
京都では平安時代から端午の節句にちまきを食べる習わしがあり、現在のように笹で包む形は、江戸時代に和菓子店である川端道喜(かわばたどうき)が朝廷に献上するために整えたものとされています。それ以前は「ちがや」という草で包まれていたといいます。
こうした歴史を学んだうえで、体験が始まります。

参加者は、ちまきを束ね、色付けしたこいのぼりの紙を巻き付けていきます。


3本をひとつにまとめ、それぞれに異なる絵柄を施すことで、個性のある仕上がりに。
親子で絵付けに向き合う姿も多く、連休らしい時間が流れていました。

神輿の通過|祭礼と重なる時間

イベントの終盤、店前を稲荷祭 還幸祭の神輿が通過します。
当日は雨よけのカバーが施されていましたが、松原通を大きな神輿が道幅いっぱいに進む様子は迫力があります。

参加者は店先からその様子を見送り、端午の節句の行事と地域の祭礼が重なる時間となりました。
想いを引き継ぐ|優子さんに聞く
イベント後、大西常商店の2階で優子さんに話を伺いました。
案内されたのは、大西里枝さんが生前最後に改装に携わったという空間です。
大正ロマンを感じさせる設えとアンティーク家具が並び、落ち着いた雰囲気が広がっています。
優子さんは静かに言葉を選びながら、今回の開催に至るまでの経緯を語ります。
当初は「今年はできない」と強く感じていたといいます。
昨年の光景が鮮明に残る中で、同じ日を迎えること自体が難しいと感じていたためです。
それでも、「何もしなければ、その一日はさらに辛く長く感じてしまうのではないか」という思いがありました。
そんな中、SNSなどを通じて多くの人から声が届き、「やりましょう!」という後押しを受け、開催を決断します。
実施を決めたのは4月20日頃。そこから短期間で準備が進み、ない株式会社や株式会社CHAHANG、鳴海餅本店などの協力により、今回の形が実現しました。
「私が悲しい時には、必ず誰かが声をかけてくれます」
そう語り、娘が残した人とのつながりに支えられていることにも触れます。
「娘が残してくれたご縁に支えられています」
当日の朝も涙が出たといいながらも、「しんみりするのではなく、若い人たちの楽しむ声が聞こえる場にしたい」と話していました。
来年については、「また来年も、という声をいただきました。ご縁をつないでくださった方々のためにも、そして娘のためにも、続けていけたら」と言葉を続けました。
開催概要
日時:2026年5月3日(日・祝)10:00〜15:00
会場:大西常商店 店先(京都市下京区本燈籠町23)
※参加方法や詳細は、
「菖蒲打ちイベントの詳細(事前告知記事)」はこちら

地域の中で受け継がれてきた行事が、人とのつながりの中で続いていきます。
※本記事は編集部が取材した情報をもとに構成しています。最新情報や詳細は公式サイトをご確認ください。京都観光の予定にあわせて、ぜひ参考にしてみてください。
編集・文・写真:京都のいちばんち

