京都の学問の神様・菅原道真公を祀る北野天満宮で、毎年9月4日に行われる例祭「北野祭」。平安時代から続く由緒ある神事であり、国家安泰や五穀豊穣を祈る祭礼として知られています。
現在では御手洗祭・北野祭・ずいき祭と続く一連の神事として再興が進められ、2027年の「半萬燈祭」に向けた準備も進行中です。
本記事では、その歴史、現代の姿、そして観光客が体験できることを紹介します。
北野祭とは?

京都・北野天満宮で 毎年9月4日 に行われる例祭「北野祭」は、神社にとって最も重要な神事です。
当初は創建翌年に私祭として始まり、永延元年(987年)に一條天皇の勅使派遣によって「勅祭(ちょくさい)」に昇格しました。以後、国家の安泰や五穀豊穣を祈る祭礼として重んじられてきました。
かつては盛大な渡御行列を伴いましたが、応仁の乱などを経て現在は神事が中心。
その伝統は秋の「ずいき祭」の巡行へと受け継がれています。
近年の取り組み:令和の北野祭へ
北野天満宮では、古来の姿を再興する取り組みとして「令和の北野祭」が進められています。例祭に加え、夏の御手洗祭、秋のずいき祭を連続した神事として重視し、地域の信仰と文化を現代に伝えています。
- 御手洗祭(8月上旬):境内の御手洗川で禊を行い、無病息災を祈願。(詳しくは 👉 御手洗祭・足つけ神事の記事はこちら)。
- 北野祭(9月4日):北野天満宮の本殿で執り行われる最重要の例祭。
- ずいき祭(10月1〜5日):渡御行列を受け継ぐ華やかな秋祭り。
この三つの祭礼を通じて、平安時代の祭祀の精神を未来につなごうとしています。
ずいき祭(瑞饋祭)とは?
ずいき祭は秋の収穫に感謝する行事で、村上天皇の時代に始まったと伝えられています。
「第一鳳輦」「葱華輦」といった由緒ある神輿が登場し、八乙女や花傘行列も復活。華やかな渡御は、平安の雅を今に伝えます。
行事の流れは、
- 神幸祭(10月1日):御神霊を御鳳輦に遷し、西ノ京の御旅所へ巡行
- 還幸祭(10月4日):御旅所から本社へ御神霊を戻す巡行
- 后宴祭(10月5日):本殿に還御後の祭典
と続き、5日間にわたって執り行われます。
主な行事スケジュール(2025年予定)
日付 | 行事 |
---|---|
8月6日 | 御手洗祭 前夜祭(禊の儀式) |
8月7日 | 御手洗祭(みたらしさい) |
9月4日 | 北野祭(例祭) |
10月1日〜5日 | ずいき祭(瑞饋祭):里芋の茎「ずいき」で飾られた神輿が巡行 |
北野祭(例祭)とずいき祭の位置づけと体験できること
9月4日 北野祭(例祭)
- 北野天満宮で最も重要な神事中心の祭典。
- 神職と限られた関係者によって本殿で厳粛に執り行われ、一般参拝者は直接神事を見ることはできません。
- 当日は境内で参拝可能で、楼門や本殿周辺から祭礼の雰囲気を感じられます。
👉 一般参拝者が体験できること
- 神職の動きや本殿前の様子を一部垣間見る
- 境内で神事当日の厳粛な雰囲気を体感
10月1日〜5日 ずいき祭(神幸祭・還幸祭)
- かつて北野祭で行われていた渡御行列を受け継ぐ秋の祭礼。
- 神幸祭(10月1日):御神霊を「御鳳輦」に遷し、西ノ京の御旅所へ巡行。
- 還幸祭(10月4日):御旅所から本社へ御神霊を戻す巡行。
- 豪華な神輿、花傘、八乙女や稚児行列などが街を練り歩き、華やかな秋祭りを彩ります。
👉 一般参拝者が体験できること
- 渡御行列を沿道で観覧(写真撮影も可能)
- 西ノ京の御旅所で神輿や鳳輦を間近に見学
- 期間中、御旅所周辺の賑わいや出店を楽しむ
北野祭とずいき祭のポイント整理
北野祭(例祭) | ずいき祭(神幸祭・還幸祭) | |
---|---|---|
日程 | 9月4日 | 10月1〜5日 |
性格 | 神職中心・神事のみ | 一般公開・渡御、神輿巡行 |
内容 | 本殿での儀式・ご祈願 | 御鳳輦や神輿の巡行、花傘行列 |
見学可否 | 境内参拝は可能、本殿神事は不可 | 沿道・御旅所で自由に観覧可 |
雰囲気 | 厳粛・静寂 | 華やか・賑わい |
2027年「半萬燈祭」に向けて
北野天満宮では令和9年(2027年)、菅公御神忌1125年の大祭「半萬燈祭」が予定されています。
その節目に向け、新たな神輿の製作が2025年から着手され、2026年完成を目指して準備が進められています。進捗は今後変更となる可能性もあるため、最新の公式情報に注目が必要です。
北野祭とあわせて訪れたい周辺スポット
- 上七軒歌舞練場
京都最古の花街「上七軒」にある歌舞練場。映画『国宝』のロケ地としても登場し、歴史ある佇まいを感じられます。 - 光盛大明神
上七軒の街角に佇む小さな社。こちらも『国宝』ロケ地で、舞妓の世界を感じさせる風情あるスポット。

👉 北野天満宮から徒歩圏内にあるため、北野祭やずいき祭とあわせて訪れると、京都の祭礼文化と映画の舞台を同時に楽しめます。
まとめ:千年の歴史を未来へつなぐ北野祭
北野天満宮の北野祭は、987年に勅祭として定められて以来、国家安泰と五穀豊穣を祈る神事として続けられてきました。
9月4日の例祭は厳粛な神事を、10月のずいき祭では華やかな渡御行列を体験できます。さらに周辺には映画ロケ地や花街文化を感じられるスポットもあり、京都ならではの歴史と現代の魅力を一度に味わえるのが特徴です。
京都の秋を象徴する祭礼の姿を、ぜひ現地で体感してみてください。
※本記事は2025年9月時点での取材情報をもとに構成しています。日程や内容は主催者発表を優先とし、必ず北野天満宮の公式サイトで最新情報をご確認ください。京都観光の予定にあわせて、ぜひ参考にしてみてください。
参考文献
- 北野天満宮公式サイト「北野祭」
https://kitanotenmangu.or.jp/event/kitanosai/ - 京都観光情報サイト「京都観光ガイド」北野祭紹介ページ
https://kyototravel.info/kitanomatsuri - 文化遺産オンライン「北野祭瑞饋祭」
https://www.dentou-hasshin.bunka.go.jp/search/252.html
文・編集:京都のいちばんち